映画『帰ってきたヒトラー』現代ドイツのリアルを浮き彫りに。

ポップな感じのコメディ映画かと思って観たら、超センスのいいコメディ&めちゃくちゃ考えさせられる濃いストーリーだった。

予告編よりはじゃっかん踏み込んでるくらいにご紹介します。ネタバレ苦手な方はご注意を。

帰ってきたヒトラー [ オリヴァー・マスッチ ]

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感想(3件)

『帰ってきたヒトラー』はドイツの風刺小説(タイトル同じ)が映画化されたもので、よみがえったヒトラーによって、現代ドイツのリアルな内面が浮き彫りにされていく映画だ。

ストーリーは、ヒトラーが草むらで目を覚ますところからはじまる。

1945年に死んだと思ったら、2014年へタイムトリップしつつよみがえったヒトラー。

「ヒトラーのコスプレしてるやばい奴」な状態で街中をさまよったあげく女性に催涙スプレーをかけられたヒトラーは、ふらふらと辿りついたキオスクの新聞スタンドで、ようやく現在が2014年だと知り、そのまま意識を失う。

そんなヒトラーを偶然見つけて目をつけたのが、クビを言い渡された直後のテレビマン、ザヴァツキ。

彼ももちろんヒトラーを「ヒトラーのそっくりさん」だと思っているが、ヒトラーが街中の人々へ政治についてインタビューした映像は、動画サイトでなんと100万回再生。これはすごい。

ザヴァツキは自らのテレビ局復帰のため、動画を携えヒトラーという逸材をテレビ局へ連れていく。

そこでヒトラーはテレビ局員たちの心をつかみ、テレビ出演することになる。出演したのは政治ネタがウリのバラエティ番組。

ここでヒトラーはお得意の演説をぶちかまして視聴者に衝撃を与え、トリコにしていく。

なんといっても現代はネット社会、盛り上がるスピードがはやいはやい。

国民は「ヒトラーそっくりお笑い芸人」というポジションにおさまったヒトラーが本物のヒトラーとは知らずに熱狂する。

ヒトラー、ヒトラーを見つけてきたザヴァツキ、そのほかのテレビ局員、そして現代ドイツの行き先は……?

コミカルなシーンも多いけど、すごい映画だった。語彙がなくて申し訳ないが、すごい、生き方を考えさせられるレベルの重量級。

特に衝撃を受けたのが、セミドキュメンタリーという手法だ。

ふつうのドラマや映画と同じく軸になっているストーリーは演技だけど、ドキュメントの部分もあるのだ。

ヒトラーが「現代のドイツが抱える移民問題についてドイツ国民はどう思っているのか」と街の人々へインタビューするシーンはドキュメンタリーで、生の声が流される。

こういう手法って映画界で結構メジャーなんだろうか。映画を観なさすぎて分からないけど、初めて見て感動した。

そして観おわったあとウィキペディア先生に聞いたら「ヒトラーは人種主義で他民族を迫害した」らしい。

移民問題なんて超ドンピシャなわけだ。

無知っておそろしい。第二次世界大戦やドイツについて詳しければ詳しいほど面白い映画だと思う。

そして映画全体を通して、何がドキュメンタリーで何が演技なのか、ごちゃ混ぜになっていくように作られている。たとえば原作『帰ってきたヒトラー』は、現代によみがえったヒトラーが書いたというテイになっている。

映画撮影シーンもあり、映画化された『帰ってきたヒトラー』のキャストとして、よみがえったヒトラーが、ヒトラー役で出演している。

うん?

今私が見てるヒトラーって本物なの?

と混乱してくるような、ぜんぶドキュメントに見えてしまうようなつくり。

実際にはヒトラーが蘇えることはないけど、ヒトラーのようなカリスマ的存在が現れたとしたら、ドイツはまた戦争をはじめてしまうかも、世界はまた戦争をはじめるのかも。

そういうエネルギーは現代にもあるんだと、反戦系の映画では私は見たことがない、リアルな部分をえぐり出している映画だった。

ドイツだけじゃない。

私は最初ヒトラーの演説シーンを見て「すごい」と思った。「かっこいい」と。よく分かんないけど魅力的なのだ。筋が通っていて、カリスマ性がある。

そして映画が後半に進むにつれて、ヒトラーの演説を魅力的だと思った自分が怖くなった。

当時のドイツの民衆だって、多分そうだったのだ。自分も時代と生まれる環境によっては、ナチスドイツを作った一人だったかもしれない。

今から先だって、何かの拍子に、とんでもない悲惨な歴史の作り手側に回ってしまうのかもしれない。

最初からコミカルでとっつきやすく、演説シーンで魅了され、ヒトラーの残酷さで掻き乱され、最後まで見て、ぞっとした。

クオリティが高くて、なにより制作陣の熱意が伝わってきて温かみのある映画だった。

売れればいいとかじゃなくて、映画という媒体をつかってゴリゴリに熱いメッセージを伝えてくる感じ。よかった。

ぜひ観てほしい。

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