斉藤家に寝袋持っていくぞ。

斉藤が一人暮らしをはじめたらしい。情報が遠い。

私は高校時代から斉藤の親友を名乗っているはずなのに、一人暮らしをはじめたという大ニュースを「らしい」などという伝聞形式でしか伝えられない。ふがいない。

というのも、スマホに「引っ越したよ」と通知が届いただけで、実際に奴が引越ししているところを見ていないのだ。遠いよ。親友のわりに情報が遠い。

引越し前に「呼んでくれたら手伝いにいくよ」と呼ばれる気配もないのにしつこく連絡したのだが、そのつど「本当に運ぶものないから」と断られていた。さみしかった。

「お前どうせヒマだろ、手伝いに来いよ」と言われるのも腹立たしいけども、まったく頼ってもらえないのは実にさみしい。

そして斉藤は本当に一人で引越しを終えたらしい。

斉藤が引っ越してから数日たった頃、突然「卒業旅行はうちに泊まる?」と誘われた。もともとは夢の国へ旅行したあとホテルに泊まるという予定だったので、安上りでいいやとマッハで食いついた。

食いついてから、私は思った。

私のぶんの布団はないんじゃね?

そこで「寝袋持っていってもいい?」と聞いてみたところ、返ってきた言葉が「ありがとう! 布団ひとつしかないから私は床で寝ようと思ってたんだ」。

床で寝ようと思ってたんだ。

とは。

そんなことありえるんだろうか。仮にありえたとして、リアルに当日斉藤が「私は床で寝るから布団つかっていいよ」と言ったとして、私が「そっかありがとうおやすみ」と了承したら、それはどっちがサイコだろうか。

どっちもサイコだがよりヤバイのは私ではないだろうか。

ちなみにコンロもないらしい。というわけで卒業旅行前にいちど、宿泊に必要な物を置いてくることにした。

寝袋と防寒具を背負い(私は斉藤家に暖房がない可能性を危惧している)、カップ麺だの菓子類だのを紙袋につめたところ、引っ越した友人宅へ遊びに行くというよりも、自らが引越し中の風体になってしまった。

本題はここからだ。ここまでしゃべり倒しておいて今までの話はすべて前フリである。

実はこの寝袋、「持って行っていい?」と言ったあと、かの有名な熱帯雨林で3,000円弱で買った。買ったのでレビューしたい。

寝袋は引越祝として斉藤家に捧げてくるので、他人の所有物をこっそりレビューするという倫理的に素敵な記事ができあがる予定である。

もし「うっかり永遠に眠ってしまうほど寒かった」とか「この先何を忘れても、私はこの腰の痛みを忘れない」というディスしか出て来ない場合は商品名を出してのレビューは書けないので、3,000円という価格帯でハズレを引いた女もいると胸に留めていただければ嬉しい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする