ガムマシーンと戦う少年。

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感想(1件)

近所の薬局に、ガムのガチャポンがある。

十円玉を入れてつまみを回すと、ガムが出てくるのだ。調べてみたらこの機械、「ガムマシーン」というカッコいい名前らしい。

私はそのとき、パンを持ちレジへ並んでいた。

ふと見ると、男の子がガムマシーンにしがみついていた。

推定三歳。必死につまみを回そうとしている。

その子は絶対に小銭を投入していないのだが、とにかくねじきる勢いで、回らないつまみに全体重をかけていた。

私はレジに並んだままその光景を眺めていた。

面白いことが起こりそうな予感がしたからだ。

何か起きてくれ。

あわよくば、原稿用紙三十枚くらいで綴ってしまいたくなるような、人生の哲学とか倫理とか道徳とかそういう含みのある、なおかつ一生忘れられないインパクトのある、くわえて若干のノスタルジーを味わえるような、そんな面白いことが起きてくれ。

少年は淡々とガムマシーンと格闘していた。

わかった。多くは望まない。

シンプルなことでいい。そのつまみがねじ切れて大量のガムが落ちてくるとか、大量の小銭が落ちてくるとか、そういう面白いことが起こらないだろうか。

さあガムマシーンよ、君の本気を見せてくれ。個性を活かして未来のために戦ってみないか。

ガムマシーンにご縁がなかったのならば今後のご健勝をお祈り申し上げるとして、少年だ。

少年、そのボーダーのTシャツを突然水玉に変化させることはできないだろうか。つまみに力をこめるほど毛根から髪が押し出されてロン毛になるということはないだろうか。

何か面白いことを。さぁ頼む。

しかし実際には、ガムマシーンにも少年にも何の変化も起きず、少年は急に興味をなくしたようにガムマシーンから離れた。

無表情だった。

すでに現実という味を知っている顔だった。

あ、子どもって、こんな虚無みたいな顔するんだ。そんなことを思っていると、横から視線を感じた。

振り向くとレジの店員さんと目が合った。彼女の目は「Hurry up」と言っていた。

「あ、すいませn」とコミュ障全開の謝罪を述べて、台にパンを置いた。

会計を終えると、もう男の子はいなかった。

面白いことが起きそうな予感って時々感じるのだが、いつも「結局何も起きなかった」と、日常に対して残念感が増すだけで、だいたい面白いことは起きない。

しかも、自分自身、どんな面白いことを望んでいるのか分からない。なんかよく分からないけどエキサイティングでソークールでハイパーインタレスティングなこと起きないかな、と思っている。

百円落ちてねぇかな。

……

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