映画は、細かいストーリーを把握する能力がないので、場面場面を観て楽しんでいる。
たとえば事件現場の場面はオキノ(ニノ)の前髪しか見ていなかった。おかげで前髪が風に乱れていることはよく分かったのだけども、どんな事件の現場なのかは分からないまま話は進んだ。
あと難しい話がはじまるとタチバナ(吉高由里子)の髪を見ていた。最初はばっつりおかっぱなのに、後半に行くにつれて、耳にかけたりしている。
私はタチバナの登場シーン、おかっぱ頭にびっくりした。
「三十歳くらいで検事と一緒に働く女性」と言ったら、一般的には活発なイメージじゃないだろうか。気が強くて、胸を張って歩くタイプ、みたいな。髪型は前髪のない一つ結びとか、前髪があっても斜めわけとかで、顔のよく出た髪型をイメージしていた(予告映像も見ずに映画館行った)。
だもんで、黒髪のおかっぱは予想外だった。
髪って人間の中で、毛のなかではまつ毛に次いで地位が高い。しかし爪と同様、比較的死んでいる部位である。
それなのに、表情豊かだ。疲れたり汗に濡れたり風に吹かれたり、化粧より乱れも分かりやすい。
序盤のシーンのタチバナは、比較的俯きがちだったと思う。あの俯き方、私はおかっぱ経験が長いので分かるのだが、あれは髪が動かないようにしているのだと思う。
というのも、顔が上を向けば上を向くほど、髪は簡単に動く。ちょっとの風で顔周りの髪がズレるのだ。『検察側の罪人』はかなり早足で歩いていたので、上を向いて歩いていたら即、顔周りから髪が消え去る。
でも顎を引いて若干俯きがちになると、そこそこの風が吹いても髪は動かない。
結果的に下から窺うような視線の動かし方になるから、どちらかというと暗い印象を与えがちである。
髪は、おそらくタチバナにとって鎧だったのだと思う。「心を開くまでは髪で顔を隠していたい」っていうのは誰にでもある人間の心理かもしれないが、大人の女性でその拘りを強く持っているのは稀だ。かなり心を閉ざしたタイプで防衛本能強めだと思う。
そんなタチバナが、オキノとのラブなシーンの後は両耳に髪をかけていて、「すげぇ」と思った。
髪だけ見ていても、あまり明るい性格じゃない女性が一人の男性に心を許していく過程が見えた。
両耳に髪をかけるって、ロングヘアだと大した抵抗はない。耳にかけても、髪が長いから首回りにたんまり髪があるのだ。でもおかっぱ頭だと、髪を耳にかけた時点で顔周りにほとんど髪が残らない。
タチバナがオキノに心を許したのだなと、あのシーンを見て思った。
それにしても寒くないか今日。
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