理想の異性について(佐藤 feat. ティラノサウルス)

私の中では、「私を好き=私より優れていない」という方程式ができあがっている。

特に異性に対しては、「あの人は私に気があるのかもしれない」と思った途端、その人を尊敬できなくなってしまう。

これには理由がある。

理想の異性について(佐藤 feat. ティラノサウルス)

人間関係だと異常な方程式に見えるが、研究の世界で考えてみると、ごく普通のことだ。

ティラノサウルスをご存知だろうか。

大型の肉食恐竜で、恐竜の中の王様的な立ち位置だ。

このティラノサウルス、体の表面はウロコっぽい感じで描かれることが多いが、最近、実は羽毛が生えていただの、いややっぱりそうでもなかっただの、色々言われている。

A「ティラノサウルスの表面はウロコ!」

B「羽毛生えてる祖先見っけ!ティラノサウルスの表面は羽毛だ!」

C「やっぱウロコだよ!ウロコ生えてたっていう新しい証拠見つけた!」

Aが旧ウロコ説、Bが羽毛説、Cが新ウロコ説である。

真実はどうあれ、AよりもBの方が新しく、BよりもCの方が新しい。研究はこうやって日々進化していくんだろう。

じゃあこの説の中で何が魅力的かといえば、AよりもBだし、BよりもCだ。

旧ウロコ説と新ウロコ説は結果的にどちらもウロコだと主張しているけれど、羽毛説も踏まえたうえでウロコ説を唱えている新ウロコ説の方が強い。

仮に、私が恐竜の研究者で、Aの旧ウロコ説を主張していたとしよう。

「ティラノサウルスの表面はウロコだよー」と言っている私に、「そうだそうだー」と言う研究者と、「羽毛生えてる祖先見つけたんだよね、ティラノの表面って羽毛なんじゃない?」と言う研究者、どちらが魅力的だろうか。

むろん、後者である。

話を戻すと、いま研究の世界に例えたのが「私を好き=私に賛同するだけ」「私を嫌い・否定する=私よりも優れている」という感覚だ。お分かりいただけただろうか。

大好きな恐竜の話を出してドヤ顔をしたところで、問題はそこじゃない感が強い。

人間として「自分を嫌いな人が好き」というのは、たぶんあまり健全じゃないだろう。

調べてみると、こういうことを言うのはどうやら自分自身が自分を嫌いな人らしい。

なるほど、たしかにそうだと思った。

私はただの若い女だ。

少なくとも外にいる時は、意見はあえて言わないし、誰に対してもへらへらしている。

それで上手く場が回ることはあっても、そんな女が好きだなんて人間は尊敬できない。

じゃあ、自分嫌いな人間の、理想の異性とはどういうものだろうか。

何かの研究の役に立つと信じて、私の理想の異性を述べよう。

まず「一般的な理想の異性」はどうなのかと言えば、乙女ゲームのキャラクターを見ている感じだと、自分を愛してくれる人だろう。

優しくて、頼りになって、自分を大切にしてくれる人だ。言い換えれば、自分を肯定してくれる、認めてくれる人である。

私もそういう異性は魅力的だと思うのだが、実際に肯定してもらうとコレジャナイ感が強いのである。

じゃあどういう人間が理想かと言うと、スマートに否定してくれる人間だ。

より細かく言えば、物静かで、表面上は円滑にコミュニケーションをとってくれて、こちらを人間として尊重してくれながらも、まったく私を相手にしていないのがにじみ出ていると望ましい。

もしくは、こちらを否定するまでもなく、圧倒的な何かを持っている人間が理想だ。常識面でも、コミュニケーション能力でも、技術でも知識でも、ジャンルは何でもいい。

自分が絶対に敵わない何かを持っていてほしい。

さあ、ここまで1403文字も書き連ねてきたが、つまり何が言いたいんだと言うと、ドラマ「ブラックペアン」を見てほしい。

「は?」と思ったそこのあなた。

ブラックペアンは自分嫌いな人間の性癖に刺さる。

いわゆる医者モノで毎話毎話手術シーンが出てくるのだが、雰囲気だけざっくり言うと、圧倒的に手術の上手い主人公がまわりの人間を見下している話だ。

ネットで調べたところ、自分嫌いな人間は、「嫌われることが気持ちいい」らしい。

ブラックペアンの脇役に自分を重ねれば、結構な気持ちいい思いができる。

かくいう私も毎週リアルタイムで見ながらひっそりと悦に入っている。

知り合いにティラノサウルスがいる方は、彼もウロコか羽毛かでアイデンティティが揺れて自分嫌いになっているだろうから、ぜひ彼にも勧めてほしい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする