「このレモンティーについて商品紹介するとしたら、どうする?」
東京タワーのフードコートで、私は友達の斉藤と熱く語り合って(私が斉藤に一方的に語って)いました。
レモンティーについて、斉藤が教えてくれた商品紹介
斉藤は、感情を表に出しません。割と最近まで、感情が無いのかと思っていました。
楽しい時も、よほど感情のビッグウェーブが来なければそれほど楽しそうに見えないし、斉藤が私と感情を共有しようとすることも殆どありません。
東京タワーの展望台は楽しかったようで、真顔で「楽しい」とつぶやいていました。
そんな彼女ですが、自分の興味のある話には食いつきがいいですし、持論を教えてくれます。
高校時代にけんかをしたとき「持論は曲げない」と真顔でトドメを刺されたことがあるので、彼女の持論は絶対に尊重しなければいけません。
とはいえ、基本的に彼女は聞き上手です。
フードコートにてひととおり無言でとんこつラーメンを食べた後、私は、持参した午後の紅茶レモンティーを飲みながら問いかけました。
「このレモンティーについて商品紹介するとしたら、どうする?」
そして私は、彼女の答えを待つことなく、続けました。
「味とか香りとか、ほかのレモンティーとの比較だったら、レモンティーに一番詳しい人が書いた記事が、一番価値が高いじゃん」
彼女はうなずきました。
「でも、東京タワーのフードコートで飲んだってエピソードを入れたら、それはエッセイだし、私にしか書けないものになるよね」
彼女はうなずきました。
「ってことに最近気づいたの」
思わずドヤ顔をしてしまいました。
彼女は、
「雑誌のコラムはそういう商品紹介が多いよ」
と、言いました。
ドヤ顔を引っ込めるのに精いっぱいで、返す言葉がありませんでした。どうやら半年かけて、私はやっと「模倣」にたどりついたようです。
というわけで、今日はレモンティーを持って図書館で雑誌を読んできました。
今日の私は一味違うぜと意気込んでいたのですが、到着して、雑誌をめくってみて、驚きました。
ファッション誌はファッションの写真がほとんどで、ほとんどコラムに出会うことができないのです。
斉藤が言っていた商品紹介のページには、結局出会えませんでした。
と、レモンティーを飲みながら記事を書いていましたが、斉藤からLINEがきたので確認してみたところ、「私はミルクティー派だからレモンティーの商品紹介は書けないと思う」ということでした。